冬の夜、山あいの舞庭で湯が沸いている。人々は「テーホヘ、テホヘ」と声を重ね、夜が明けるまで舞い続ける。やがて大きな面の鬼が現れ、反閇と呼ばれる足取りで大地を踏む。
鬼を追い払うためではない。奥三河の花祭では、鬼が踏むたび、地の底へ新しい力が入ると考えられている。五穀豊穣と無病息災を運ぶ鬼を、土地の人々は待っている。
一つではない花祭
花祭は毎年十一月から一月にかけ、設楽町、東栄町、豊根村の十を超える地区で行われる。七百年以上続くとされ、国の重要無形民俗文化財に指定されている。
どこへ行っても同じ祭りが見られるわけではない。舞の順番、太鼓、掛け声、鬼の所作は地区ごとに違う。山を一つ越えれば、同じ名の祭りが別の時間で息をしている。

湯を浴び、朝を迎える
神を迎え、舞庭を清め、子どもたちが舞い、鬼が大地を踏む。終盤の湯ばやしでは、釜の湯が舞庭へ激しく振りまかれる。その湯を浴びると、一年を健康に過ごせるという。
怖い面の奥に、追い払うべき悪はいない。暗い山の夜を一緒に越え、朝を迎えるための力がいる。奥三河で会う鬼は、人々が何百年も待ち続けてきた客である。
行事概要
時期:例年11月から翌年1月
場所:愛知県奥三河の各地区
地区ごとに日程・受け入れ案内が異なるため、公式の最新情報を確認
愛知県の公式情報に基づく(確認日:2026年10月8日)。次回の地区別日程は、公式発表後に反映します。おでかけ前に各地区の案内、交通、撮影上の注意をご確認ください。アイキャッチと本文挿絵は当サイト制作のイメージ画で、実際の祭りの写真ではありません。
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