もののけ、みーつけた YOKAI FOLKLORE

日本の妖怪図鑑

YOKAI FIELD GUIDE

日本各地に伝わる妖怪を、地域とゆかりの土地から探せる妖怪図鑑です。一次資料や自治体資料への出典をたどりながら、その土地の地形・暮らし・祈りとともに記録しています。

地方からさがすBY REGION
北海道 東北10 関東 中部 近畿 中国 四国 九州10 沖縄

点が灯った地方から、いま訪ねられます。各地の妖怪が見つかるたび、地図に灯りが増えていきます。

いま見つかっている妖怪ALL
清姫の浮世絵 和歌山
近畿 ・ 和歌山県 日高川町・道成寺 清姫きよひめ 僧を追って蛇身となり、道成寺の鐘に巻きついて炎を吐く清姫。紀伊・日高川の風景とともに、執念と法華経供養の物語が絵巻に語り継がれた。 鐘を焼く蛇身の女兵庫県立歴史博物館『道成寺縁起』/月岡芳年『新形三十六怪撰』
百目鬼の浮世絵 栃木
関東 ・ 栃木県 宇都宮・塙田 百目鬼どうめき 両手に百の目を光らせ、藤原秀郷の矢を受けた大鬼。四百年後に娘へ姿を変え、本願寺の教えで悪心を捨てた物語が宇都宮に伝わる。 百の目を光らせる鬼宇都宮市『宇都宮のヒーローと妖怪百目鬼のお話』/鳥山石燕『今昔画図続百鬼』
手長足長の浮世絵 福島
東北 ・ 福島県 会津・磐梯山 手長足長てながあしなが 猪苗代湖の水を片手ですくう手長と、磐梯山と明神ヶ岳をまたぐ足長。会津に棲んだ夫婦の怪物は、旅の僧に調伏され神になったと伝わる。 湖と山をまたぐ夫婦の怪物磐梯町『歴史的風致維持向上計画』/寺島良安『和漢三才図会』
山童の浮世絵 熊本
九州 ・ 熊本県 葦北・球磨 山童やまわろ・やまわらわ 秋の彼岸に川を離れて山へ入り、春には河童へ戻ると伝わる山の童。熊本南部の山あいでは、その名を直接呼ぶことさえ避けられた。 季節を渡る山の妖怪熊本の山童伝承/鳥山石燕『画図百鬼夜行』
一本だたらの浮世絵 奈良
近畿 ・ 奈良県 上北山村・十津川村 一本だたらいっぽんだたら 奈良・紀伊の山道に現れる、一つ目一本足の巨人。十二月二十日の「果ての二十日」だけは、伯母峰や果無山を越えてはならないと恐れられた。 山越えを止める一本足の妖怪高田十郎『大和習俗百話』/環境省・奈良県公式
鉄鼠の浮世絵 滋賀
近畿 ・ 滋賀県 大津市・三井寺 鉄鼠てっそ 皇子誕生を祈り、褒賞として三井寺の戒壇建立を願った僧・頼豪。約束を反故にされた強念が八万四千の鼠となり、比叡山の経巻を食い荒らしたと伝えられる。 破られた約束から生まれた鼠の怨霊『太平記』の頼豪伝説/鳥山石燕『画図百鬼夜行』
松前の飛ぶ怪物の浮世絵 北海
北海道 ・ 北海道 松前郡松前町 松前の飛ぶ怪物まつまえのとぶかいぶつ 安永四年の松前。野草を摘みに出た昼、人より二丈余も高い怪物が石の上に現れ、空を飛んだ。見た者には五月の粽を食べよ、と伝えられた。 石の上に現れ、空を飛ぶ巨人の怪異蛎崎廣時の日記/深瀬春一「松前怪談十種」
輪入道の浮世絵 京都
近畿 ・ 京都府 京都・東洞院通(祖型とされる怪談の舞台) 輪入道わにゅうどう 炎の中を、入道の顔をつけた車輪がひとりで転がる。見た者は魂を失うが、戸口の一枚の札だけは、その怪異を家の内へ近づけない。 火をまとい、見た者の魂を奪う車輪の妖怪鳥山石燕『今昔画図続百鬼』「輪入道」
帷子辻の浮世絵 京都
近畿 ・ 京都府 京都・太秦(現・京都市右京区) 帷子辻かたびらがつじ 京都・太秦の辻に、犬や烏が取り囲む女の亡骸が折々に現れる。檀林皇后が死後の無常を示すため亡骸を野にさらしたという伝説を、江戸の怪談集が繰り返す怪異へ変えた。 辻に繰り返し現れる女の亡骸桃山人『絵本百物語』「帷子辻」
酒呑童子の浮世絵 京都
近畿 ・ 京都府 丹波・大江山(現・福知山市大江町) 酒呑童子しゅてんどうじ 丹波・大江山に鬼の一党を率いて城を構え、源頼光たちの毒酒に倒れた酒呑童子。斬られた首さえ飛び、頼光の兜へ食らいついたという。 山に城を構えた鬼鳥山石燕『今昔画図続百鬼』「酒顚童子」
磯なでの浮世絵 長崎
九州 ・ 長崎県 肥前・松浦沖(長崎県北部〜佐賀県北西部) 磯なでいそなで 北風が荒れる肥前・松浦沖で、逆向きの針を生やした巨大な尾が船を撫でる。姿を見せぬまま人を海へ引き込み、食うという恐ろしい怪魚。 尾で人をさらう海の怪魚桃山人『絵本百物語』「磯撫で」
白蔵主の浮世絵 山梨
中部 ・ 山梨県 甲斐国・夢山(現・甲府市北部に比定) 白蔵主はくぞうす 子を奪った猟師を止めるため、僧の白蔵主に化けた甲斐・夢山の老狐。正体を守るため本物の僧を食い、五十年も人の顔で生きたという。 僧になりすます老狐桃山人『絵本百物語』「白蔵主」
桂男の浮世絵 和歌山
近畿 ・ 和歌山県 那智勝浦町・下里 桂男かつらおとこ 満ちきらない月を長く見ていると、月の隈から男が手招きをする。招かれた者は寿命が縮むという、那智勝浦・下里に残る月の妖怪。 月から招く妖怪桃山人『絵本百物語』「桂男」
赤ゑいの魚の浮世絵 千葉
関東 ・ 千葉県 南房総市・野島崎 赤ゑいの魚あかえいのうお 助かったと思って上陸した島は、背に砂を積もらせた巨大な赤えいだった。船が離れると島は沈み、海そのものが動きはじめる。江戸の本に描かれた海の怪異。 島に見える巨大魚桃山人『絵本百物語』「赤ゑいの魚」
芝右衛門狸の浮世絵 兵庫
近畿 ・ 兵庫県 洲本市・三熊山 芝右衛門狸しばえもんだぬき 芝居見物へ来た古狸は、犬に襲われても二十三日、人の姿を解かなかった。土地を渡るたび話まで化け続けた、淡路の芝右衛門狸の物語。 化け狸桃山人『絵本百物語』「芝右衛門狸」
舞首の浮世絵 神奈川
関東 ・ 神奈川県 真鶴(『絵本百物語』の物語上の舞台。現在の特定地点は不詳) 舞首まいくび 三つの首が真鶴の海へ落ちても、争いだけは終わらない。夜は火を吐き、昼は巴形の波を立てると、桃山人の『絵本百物語』は書く。 争い続ける妖怪桃山人『絵本百物語』「舞首」
手洗鬼の浮世絵 香川
四国 ・ 香川県 高松市から丸亀市のあいだの入海 手洗鬼てあらいおに 高松から丸亀へ続く入海で、三里離れた山々をまたいで手を洗う。名も素性もわからないまま、その動作だけで呼ばれた讃岐の巨人。 巨人の妖怪桃山人『絵本百物語』「手洗鬼」
寝肥の浮世絵 宮城
東北 ・ 宮城県 奥州(本文の地名)。十符の菅薦の土地として宮城県利府町へ接続 寝肥ねぶとり 眠ると体は座敷いっぱいに膨らみ、いびきは車の轟きになる。寝床に敷かれた十符の菅薦は、宮城県利府町でいま再び編まれている。 眠ると膨らむ妖怪桃山人『絵本百物語』「寝肥」
宇婆の浮世絵 鹿児島
九州 ・ 鹿児島県 奄美大島(山道の峠辺り。特定地点は不詳) 宇婆うば 奄美の山野で島人を引き迷わせる、ケンムンの類。幕末の絵には、人と毛深い宇婆が手を取り合う。いつもの山道の行き先が変わる。 道に迷わせる妖怪名越左源太『南島雑話』「宇婆」
お歯黒べったりの浮世絵 東京
関東 ・ 東京都 江戸の出版文化(出現地は不詳) お歯黒べったりおはぐろべったり 古い社で伏し拝む女に声をかけると、振り向いた顔には目も鼻もなく、黒い歯を見せる大きな口だけがあった。『絵本百物語』に描かれた妖怪。 絵から出てきた妖怪桃山人『絵本百物語』「歯黒べったり」/竹原春泉斎画
砂かけ婆の浮世絵 奈良
近畿 ・ 奈良県 奈良県(一次は市町村を記さない) 砂かけ婆すなかけばば 森や神社の陰を通ると、砂がばらばらと降ってくる。姿を見た人はいない。それでも奈良では、砂かけ婆と呼ばれていた。顔も体もないまま、名だけが残る怪異。 姿を見せない妖怪澤田四郎『大和昔譚』/柳田国男「妖怪名彙」
タンタンコロリンの浮世絵 宮城
東北 ・ 宮城県 宮城県 タンタンコロリンたんたんころりん 実を採らずにおいた古い柿の木が、大入道になって歩き出す。宮城に伝わる。祟りもせず、ただ夜の町をころがるように過ぎていく。 手を離れた木の妖怪柳田国男「妖怪名彙(三)」(『民間伝承』1938)/『宮城縣史 民俗3』(1956)
提灯おばけの浮世絵 東京
関東 ・ 東京都 江戸(現在の東京都) 提灯おばけちょうちんおばけ 破れた提灯に、ぎょろりと目が開き、裂け目が口になる。土地の怪談より先に、江戸の化物絵と子どもの遊びのなかで、名と姿を確かに残した妖怪。 絵から出てきた妖怪歌川芳盛『しん板化物尽し』(国際日本文化研究センター蔵)
ダイダラボッチの浮世絵 茨城
関東 ・ 茨城県 土浦市・水戸市 ダイダラボッチだいだらぼっち 筑波山に腰を下ろし、霞ヶ浦で足を洗う。常陸に伝わるダイダラボッチは、山を腰掛けにしてしまう大男。山頂が二つに分かれたのも、そのためだという。 山と湖の妖怪『茨城の民話1』・『水戸の民話』(土浦市立図書館の調査回答による)
見上入道の浮世絵 新潟
中部 ・ 新潟県 佐渡(新潟県佐渡市) 見上入道みあげにゅうどう 佐渡の夜道、行く手に小さな坊主が立っている。見上げるほどに背が伸びていく。こちらが見上げるから大きくなる妖怪で、「見越した」と先に言えば消えるという。 夜道の妖怪柳田國男『妖怪談義』/小山直嗣『新潟県伝説集成 佐渡篇』(1996)
化け草履の浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野(岩手県遠野市) 化け草履ばけぞうり 片方だけになった履物が、土間の隅に寄せてある。夜、家の者が寝静まると、それが藁の手足を生やして跳ねまわる。朝には元に戻っている。岩手に伝わる、人を害さない道具の妖怪。 捨てられた道具の妖怪佐々木喜善『聴耳草紙』(1931)「履物の化物」/『百鬼夜行絵巻』(室町)
イッシャの浮世絵 鹿児島
九州 ・ 鹿児島県 徳之島(鹿児島県大島郡。犬田布岳は伊仙町の北部) イッシャいっしゃ 雨あがりの夜道で、背の低いものが問う。「お前は何奴だ」。短い蓑に破れ傘、とうきびの穂のような尾。答えを誤ると海へ引かれ、潮を飲まされる。徳之島に伝わる、名を問う妖怪。 島の妖怪(名を問うもの)徳之島の口承(語り=平辻朝子/再話=六渡邦昭)/町健次郎『奄美妖怪考』
山姥(やまうば)の浮世絵 神奈川
関東 ・ 神奈川県 南足柄市(足柄山・地蔵堂) 山姥(やまうば)やまうば 山奥に棲む恐ろしい鬼女は、江戸の浮世絵で金太郎を抱く母になった。足柄に残る伝説と歌麿の一枚から、山姥の二つの顔をたどる。 山をめぐる妖怪能《山姥》/南足柄市「金太郎伝説」/喜多川歌麿《山姥と金太郎》1795年頃(The Met JP981)
件(くだん)の浮世絵 岡山
中国 ・ 岡山県 真庭市蒜山(旧・八束村/川上村/中和村) 件(くだん)くだん 牛から人の顔をした子が生まれ、数日のうちに先のことを告げて死ぬ。岡山・蒜山の三つの村では、戦後になってもまだ語られていた。 知らせにくる妖怪『岡山民俗学会会報』74号(1973)/天保七年(1836)瓦版/『密局日乗』文政二年(1819)
姥ヶ火の浮世絵 大阪
近畿 ・ 大阪府 東大阪市(枚岡・河内国) 姥ヶ火うばがび 神社の常夜灯から油を盗んだ老女が、死んで火の玉になった。河内の枚岡では雨の夜、一尺ほどの火が里道を低く飛ぶ。盗んだものに、そのままなってしまった話。 戒めの妖怪鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776)/『西鶴諸国ばなし』(1685)/『古今百物語評判』(1686)/『諸国里人談』(1743)
両面宿儺の浮世絵 岐阜
中部 ・ 岐阜県 高山市(丹生川)・関市(下之保) 両面宿儺りょうめんすくな ひとつの体にふたつの顔。国の正史は討たれた者として書き、飛騨と美濃の寺は開いた人として祀る。同じ一人の記録が、千三百年ならんで残っている。 守り神になった妖怪『日本書紀』仁徳天皇六十五年条/千光寺・日龍峯寺の寺伝/円空作 両面宿儺像
土蜘蛛の浮世絵 京都
近畿 ・ 京都府 京都市(北区・上京区) 土蜘蛛つちぐも 山に穴を掘って住み、朝廷に従わなかった者たちを、古い書物は「土蜘蛛」と書いた。名前だけが数百年をかけてひとり歩きし、京の塚から出てくる巨大な蜘蛛になった。 まつろわぬ者の妖怪『日本書紀』ほか記紀・風土記/『平家物語』剣巻/『土蜘蛛草紙』
二口女の浮世絵 千葉
関東 ・ 千葉県 下総国(現在の千葉県北部ほか。文献は「下総国のとある家」としか書かない) 二口女ふたくちおんな 後頭部にもうひとつ口ができ、髪が食べ物を運ぶ。ひとつの口を減らした女に、ひとつの口が増えた——江戸の『絵本百物語』が、下総国のある家のこととして書きとめた妖怪。 飢えの妖怪桃山人『絵本百物語』(1841年刊とされる・PD)/絵=竹原春泉斎
すねこすりの浮世絵 岡山
中国 ・ 岡山県 県南西部(旧小田郡=現・矢掛町/井原市/笠岡市/浅口市/里庄町ほか) すねこすりすねこすり 雨の降る晩、夜道を行く人の股を、犬の形をした何かがこすって通る。岡山県南西部に伝わる、絵の残らなかった妖怪。 道の怪(雨夜の獣影)佐藤清明『現行全国妖怪辞典』(1935)/岡山観光WEB(岡山県公式)ほか
ぬらりひょんの浮世絵 岡山
中国 ・ 岡山県 瀬戸内海沿岸(備讃灘・児島湾周辺) ぬらりひょんぬらりひょん 駕籠から降りる、大きな頭の老人。石燕はこの姿だけを描き、一行の説明も残さなかった。瀬戸内では海に浮かぶ玉として伝わる、掴みどころのない怪。 掴みどころのない怪(老人の図像/海に浮かぶ玉)鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776・PD)/佐脇嵩之『百怪図巻』(1737・PD)ほか
海坊主(うみぼうず)の浮世絵 静岡
中部 ・ 静岡県 遠州灘沿岸(=諸国の海に広く伝わる) 海坊主(うみぼうず)うみぼうず 凪いだ夜の海に、漆黒で毛のない巨大な坊主頭がぬっと立ちのぼる。数十メートルにもなる海の巨怪で、船を覆って沈めるという。諸国の海に伝わる、非人型の怪。 海の妖怪(海の巨怪・非人型)寺島良安『和漢三才図会』(1712)/鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776・PD)ほか
ろくろ首(抜け首)の浮世絵 山梨
中部 ・ 山梨県 甲斐国の山中(小泉八雲『怪談』「ろくろ首」の舞台) ろくろ首(抜け首)ろくろくび 夜、女の首がろくろのように伸びる。あるいは胴から抜けて闇を飛ぶ——首の伸びる者と飛ぶ「抜け首」、二系統がある。八雲『怪談』は甲斐の山中の抜け首の一夜を伝える。 怪異(人が化す・抜け首/飛頭蛮の系譜)小泉八雲『怪談』「ろくろ首」(1904)/鳥山石燕『画図百鬼夜行』(PD)
アマビエの浮世絵 熊本
九州 ・ 熊本県 肥後国(現・熊本県)海中 ※出現地は諸説 アマビエあまびえ 弘化三年(一八四六)、肥後の海に夜ごと光る異形が現れた。半人半魚の「アマビエ」と名乗り、六年の豊作と疫病を告げ、「わが姿を写して人々に見せよ」と言い残した。 予言獣(豊凶と疫病を告げる海の妖怪)弘化三年の瓦版(京都大学附属図書館「新聞文庫」蔵・PD)
皿屋敷のお菊(おきく)の浮世絵 東京
関東 ・ 東京都 千代田区(牛込五番町・番町皿屋敷)※播州(姫路)は別系統 皿屋敷のお菊(おきく)おきく 江戸・番町の屋敷。皿一枚を割った咎で下女お菊は井戸に身を投げた。夜ごと井戸から皿を数える声が響く——「一枚、二枚……九枚。一枚、足りぬ」。満たされぬ怨みの声。 幽霊(怨霊)馬場文耕『皿屋敷弁疑録』(1758)/葛飾北斎『百物語』「さらやしき」(PD)
鵺(ぬえ)の浮世絵 京都
近畿 ・ 京都府 京都市(清涼殿・鵺池)※骸は芦屋の鵺塚へ 鵺(ぬえ)ぬえ 平安の夜、京の御所を黒雲が覆い帝を悩ませた。雲の中にいたのは頭は猿・胴は狸・手足は虎・尾は蛇、声だけがトラツグミに似た化生。源頼政が弓で射落としたと伝わる。 化生の妖怪(合成獣・凶兆)『平家物語』巻第四「鵼」/月岡芳年・歌川国芳のPD錦絵
船幽霊(ふなゆうれい)の浮世絵 山口
中国 ・ 山口県 下関市(関門海峡・壇ノ浦沖) 船幽霊(ふなゆうれい)ふなゆうれい 時化の夜、海の上から声がする——「柄杓を貸せ」。渡せば海水を汲んで船を沈めるので、船乗りは底を抜いた柄杓を渡した。関門海峡では壇ノ浦の平家の死霊の仕業と伝わる。 海の妖怪(水死者の霊)桃山人・竹原春泉『絵本百物語』(1841)「舩幽霊」/各地の海辺の伝承
雪女(ゆきおんな)の浮世絵 新潟
中部 ・ 新潟県 越後(新潟県) 雪女(ゆきおんな)ゆきおんな 吹雪の夜、山小屋に白ずくめの美しい女が現れ、眠る者に白い息を吹きかけて凍てつかせる。けれど若い者は見逃し、「誰にも言うな」と雪へ消える。八雲『怪談』の名篇。 雪の妖怪(静かな死)小泉八雲『怪談』(1904)「雪女」/東北・北陸・信越の雪国伝承
小豆洗い(あずきあらい)の浮世絵 島根
中国 ・ 島根県 松江市(出雲) 小豆洗い(あずきあらい)あずきあらい 夜の川辺を通ると「しょきしょき」と小豆を研ぐ音がする。近づいても姿は見えない——島根・出雲の妖怪。松江には「小豆とぎ橋」が実在し、石燕の絵にも残る。 水辺の妖怪(音の怪)鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776)/松江「小豆とぎ橋」の伝承
鬼女紅葉(きじょもみじ)の浮世絵 長野
中部 ・ 長野県 長野市(戸隠・鬼無里) 鬼女紅葉(きじょもみじ)きじょもみじ 信濃・戸隠の山中で宴を開く、都ぶりの美女。招かれた武者・平維茂が酔って眠り、目覚めると女は角を生やした鬼に変じていた。謡曲「紅葉狩」の物語。 変化(美女と鬼のあいだ)謡曲「紅葉狩」(室町)/『北向山霊験記 戸隠山鬼女紅葉退治之伝』(1886)
牛鬼(うしおに)の浮世絵 愛媛
四国 ・ 愛媛県 宇和島市(南予・宇和海沿岸) 牛鬼(うしおに)うしおに 愛媛・宇和海に伝わる、頭は牛・首から下は鬼という異形。夜の海から人を襲うが、宇和島では巨大な牛鬼が神輿を先導し魔を祓う。襲う者が、守る者になる。 海の妖怪(襲う者/祓う者)竹原春泉『絵本百物語』(1841)ほか南予の伝承
むじな(のっぺらぼう)の浮世絵 東京
関東 ・ 東京都 港区赤坂(紀伊国坂) むじな(のっぺらぼう)むじな 東京・赤坂の紀伊国坂の怪談。泣く女に声をかけると、振り向いたその顔には目も鼻も口もなかった——のっぺらぼう。逃げ込んだ蕎麦屋の主人もまた、顔がない。 化ける獣(顔のない怪)小泉八雲『怪談』(1904)所収「貉」
天狗(鞍馬天狗)の浮世絵 京都
近畿 ・ 京都府 京都市(鞍馬) 天狗(鞍馬天狗)てんぐ 京都・鞍馬山の奥、僧正ヶ谷に棲むと伝わる大天狗。赤ら顔に高い鼻、山伏の姿で神通力をふるい、牛若丸(源義経)に剣術と兵法を授けたという。 山の妖怪(山の主・武芸の師)『平治物語』『義経記』/能「鞍馬天狗」
磯女の浮世絵 熊本
九州 ・ 熊本県 天草 磯女いそおんな 熊本・天草など九州北西部の沿岸に伝わる、女の姿の海の妖怪。夜、停泊した舟の艫綱を伝って忍び込み、長い黒髪で眠る人の血を吸うという。 海の妖怪(渚の女怪・碇泊の戒め)浜田隆一『天草島民俗誌』(1932)/日文研 怪異・妖怪伝承DB
キジムナーの浮世絵 沖縄
沖縄 ・ 沖縄県 大宜味村喜如嘉 キジムナーきじむなー 沖縄のガジュマルやアコウの古木に宿る樹木の精霊。赤い髪の子どもの姿で漁の名人。魚の左目だけを食べ、気に入られた家は栄えるという。 木の妖怪(境界の番人)赤嶺政信『キジムナー考──木の精が家の神になる』(榕樹書林)ほか沖縄各地の伝承
ケンムンの浮世絵 鹿児島
九州 ・ 鹿児島県 奄美大島 ケンムンけんむん 鹿児島・奄美のガジュマルの森に棲む妖怪。子どもほどの背で全身赤い毛、頭に皿をのせ相撲を好む。木を切れば祟り、木こりを助けもする境の番人。 木の妖怪(境界の番人)名越左源太『南島雑話』(奄美市立奄美博物館所蔵)/恵原義盛『奄美のケンモン』
ガモジンの浮世絵 宮崎
九州 ・ 宮崎県 宮崎・西都 ガモジンがもじん 宮崎で「泣き止まんとガモジンが来るぞ」と子を戒めるときに呼ばれた、姿のない化け物。ガモジンとは“おばけ”そのものを指す古いことばである。 怪異(おばけの声)柳田國男「妖怪古意(おばけの声)」(青空文庫)/宮崎県総合博物館研究紀要 第三五輯(小山博・2015)
ヤンボシの浮世絵 宮崎
九州 ・ 宮崎県 日向地方 ヤンボシやんぼし 宮崎・日向の夜の山道に、人のかたちの大きな影となって立つ妖怪。名は「山伏」に由来し、子を戒める里の語りのなかに生きてきた。 怪異(影・入道)日野巌「日向地方妖恠種目」/宮崎県総合博物館研究紀要 第三五輯(小山博・2015)
山男の浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野市 山男やまおとこ 遠野の深山に棲むとされた、背の高い異人。里の女をさらう話や猟師が山中で出会う話が語られ、「神隠し」の説明とも結びついた。 山の妖怪(山人)遠野物語 第三〜七・三十一段(柳田國男・1910)
オクナイサマの浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野市 オクナイサマオクナイサマ 遠野の旧家にまつられる「家の神」。桑の木の小さな神像をまつれば家が栄え、田植えには童の姿で現れて手伝ったと伝わる。 家の神(屋内神・田の神)遠野物語 第十四・十五・七十段(柳田國男・1910)
マヨヒガの浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野 マヨヒガまよひが 山中に忽然と現れる、無人の立派な屋敷。訪れた者が器物を持ち帰れば富を得るという、遠野の隠れ里。 山の怪・隠れ里『遠野物語』より
オシラサマの浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野 オシラサマおしらさま 桑の木で作られた、馬と娘の神。人と馬がひとつ屋根の下で暮らした遠野の、哀しくも温かな養蚕の記憶。 家・養蚕の神『遠野物語』より
一反木綿の浮世絵 鹿児島
九州 ・ 鹿児島県 肝付町 一反木綿いったんもめん 鹿児島・大隅地方の夜道にあらわれる、一反ほどの白い布の妖怪。ひらひらと飛んできて、人の首や顔に巻きつくという。 怪異(布)大隅の伝承より
座敷童子の浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野市 座敷童子ざしきわらし 旧家の座敷に棲む、子どもの姿の妖怪。いる家には富がもたらされ、去ると家が傾くと伝わる。 家の妖怪『遠野物語』より
河童の浮世絵 岩手
東北 ・ 岩手県 遠野市 河童かっぱ 遠野の川に棲むといわれた水の妖怪。馬を引き込もうとして捕らえられ、二度としないと詫び証文を書いた——『遠野物語』が伝える、どこか人間くさい姿。 水の妖怪『遠野物語』より